博多のうわさほか入荷

昭和15年から43年あたりの古い雑誌がもろもろ入荷しています。

まずは「博多のうわさ」。昭和33年頃の雑誌です。名物雑誌と表紙に銘打ってありますが、地元の人間にとってはとても興味深い内容となっています。

昭和33年12月号には一年を振り返るコーナーがありました。以下一部抜粋。1月16日、10年ぶりの大雪。一晩で雷山で50センチ、脊振山で19センチ積もった。4月18日には天皇皇后両陛下の御巡幸。読者のお便りには「(当時)30歳以上の人は只々ありがたくて涙をこぼし、子供達は天ちゃん、天ちゃんと親しくお迎えしていました」とあります。天ちゃん…5月3日の博多どんたくについては、花見の仮装じみた近頃の博多松囃子はさっぱり不調。さらにお便りには「昔のようなどんたく気分は出ないね。タダ酒が飲めると門付けみたいなのが増えて全く嫌になる」と散々ないわれようです。そして6月には15年ぶりの干天。8月には石堂川の干潟からガスが出て蓮池町の料亭福本の主人が呼吸困難症を呈する騒ぎ。お盆に30年ぶりの集中豪雨でやっと水不足解消、とあります。このときの降雨量、博多で51ミリ。昨今の豪雨災害が如何に酷いかわかりますね。博多はもともと水不足になりがちな町でしたから、ここ最近は断水などもなく本当にありがたいことだと思います。さらに驚くのは8月のスト。今では信じられないお中元シーズンの岩田屋で24時間のストライキ。店員さんがサンドイッチマンのように「ただいま24時間スト中です。買わないでください」という手書き札を背中に提げています。さらには女性店員が「よそで買ってくださーい」と叫んでいる様子。

合間に挟まれる飲食店や呉服店の広告も、懐かしく。BARの広告はほぼみなひらがなの「ばー」が多い模様。「紳士の」というキーワードも多いです。数ある呉服店も今残るのは紙子さんくらいですね。内容は時事にちなんだお便りが中心で、あとは当時の娯楽の中心、お芝居と映画。あとは中洲のママは誰が美人か、博多の見番の芸妓さんでおっぱいが大きなのは誰か、などたわいない話です。とにかく博多の人ならみな懐かしく楽しめる雑誌です。

 

   

「時事世界」昭和29年から35年にかけてのものが主です。

表紙からしてバラエティーに富んでいますが、内容はそのまま世界のニュースです。昭和32年の記事から一部抜粋すると、前年の南極観測隊第一陣の宗谷出発について。この宗谷、結構な老朽船だったそうで日中戦争時は貨物船として、太平洋戦争時には引き揚げ船として酷使されたあとの南極まで2万Km。楽しそうな出発前夜の夕餉の演出ですが、乗組員の方の中には家族と水盃(みずさかずき)を交わした人も多かったようです。

そのほか芸能ニュースでは、浅香光代の「エロ剣劇」「ストリップ剣劇」は評判が悪かった。日本民謡大会が東京両国の国際スタジアムで盛大に開催。長谷川一夫夫人の姉にあたる飯島ひろ子さんが小唄の「飯島派」を創立、など。

 

そのほか一般人の中でも面白い人に関する特集も。左はたぬき蒐集家の杉山さん。数千個のたぬきを蒐集、果てはおたぬき様として祀るという肝の入れ方。おたぬき明神は近隣の参詣者が絶えぬという。右はカエル蒐集家の谷さん。大正13年から集め始めてすでに2千を超える大家族。足の踏み場もない夥しさ。

 

そのほか、日本全国の風景が切り取ってあります。花巻ではお正月の買い物も大変そうです。上野のアメヤ横丁は、本当に飴屋だったんですね。錦糸町方面で製造された菓子や飴が集荷されてここで一気に売りさばかれていたそうです。

 

 

 

昭和15年の「世界画報」。時節柄戦争の絵表紙がほとんど。

 

 

昭和26年から43年にかけての「映画情報」。昭和39年の表紙は佐久間良子さん。内容は海外と日本の映画情報もろもろ。当時封切りだったのは、ジャンヌ・モローとジャン・ポール・エドモンドの「バナナの皮」。吉永小百合と高橋英樹の「こんにちは20才」。吉永小百合さん、いまとあまり変わりません。怖いくらいです。トム・クルーズといい勝負です。アクション映画だと宍戸錠の「拳銃残酷物語」、宇津井健の「殺られる前にやれ」。あとは安部公房の「砂の女」の岸田今日子さんの豊満な裸体が美しすぎる…

 

 

昭和33年から35年ごろの「映画と演劇」。2大娯楽です。こちらも洋画、邦画、歌舞伎の話題が中心です。鰐淵晴子さんがお母様と一緒にグラビアに載ってますが、そっくりです。日本で一番背の高いスターとして岡田眞澄氏が登場。めちゃめちゃいい男です。若かりし頃のミッキー・カーチスは現在のWikiには芸名ミッキー亭カーチスとなっていますが、当時は三喜亭歌痴寿。柳沢慎吾に少し似てる。

 

昭和30年頃の相撲雑誌もすこし。

 

 

 

昭和15年頃の演藝と映画。戦局を鑑みて、海外の映画情報を載せられないために改題して「演藝写真新報」となっています。上演されているものも、国民の士気を振作する「敵国降伏」など。ただ明治座のお芝居などはまだまだ女優さんが色とりどりの銘仙などをお召しになっています。新橋演舞場では大に自粛した松竹少女歌劇。表表紙は写真に手彩色、裏表紙は浮世絵でとても贅沢な冊子です。